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建設業許可が必要・不要な工事について

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建設業許可が必要・不要な工事について

2021年05月31日
建設業許可が必要・不要な工事について

建設工事に該当するか否かは、建設業法が適用されるか否かに関わってくるため非常に重要です。

例えば、500万円以上のフェリーの内装工事の場合、やはり「内装仕上工事」の建設業許可が必要なのでしょうか。また「委任契約」や「附帯工事」であれば建設業許可は不要なのでしょうか。

今回は、どんな工事をする場合に建設業許可が必要になるのか解説していきます。

※この記事で「建設工事」と表記する場合、特記ない限り建設業法において定義される「建設工事」を指します。一般用語としての建設工事とは意味が異なる場合がありますのでご注意ください。

 

500万円以上のフェリーの内装工事は無許可業者が請け負っても大丈夫?

 

そもそも建設工事とは?

 

建設業法上の建設工事の定義について確認してみましょう。

▼建設業法

第二条 この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう。

 

別表第一については割愛しますが、「別表第一の上欄に掲げるもの」とは、土木一式工事から解体工事までの建設工事の29種類のことを指しています。建設業法では、この29種類に該当するものが「建設工事」であると定義されます。

ただ、これだけでは具体的に何が建設工事に該当するかわかりません。

 

建設工事にあたるか否かの判断方法

 

建設業法の文言のみでは判断が難しいものがあるため、建築基準法その他の法令等を参考に、建設業法でいう「建設工事」に関して定義しているものがあったので、参考例として記載しておきます。

建築物、建築設備、その他土地に定着する工作物について、次のいずれかに該当する作業を行うこと。

➀新しく造る(取り付ける)

➁造り直す

③取り除く

➃解体する

 

中にはこの定義に当てはめきれないものもあると思いますが、これらに該当するものは、概ね建設業法でいう建設工事に該当すると考えていただいてよいと思います。

▼「建築物」「建築設備」の定義 (建築基準法)

(用語の定義)

第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれに当該各号に定めるところによる。

一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附随する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他のこれらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

~中略~

三 建築設備 建築物に設ける電気、ガス、給水、配水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう

~以下省略~

 

建設工事に該当しないものの例

 

千葉県の「建設業許可の手引き」に、建設工事に該当しないものの例が掲載されています。

※千葉県HP:https://www.pref.chiba.lg.jp/kenfudou/tetsuzuki/kensetsu.html

▼建設工事に該当しないもの

・自社で施工する建売用住宅の建築
・建設現場への労働者派遣
・樹木の伐採・剪定、草刈り
・道路清掃
・設備や機器の運転管理や保守点検業務
・測量や調査(土壌試験、ボーリング調査を伴う土壌分析、家屋調査等)
・建設機械や土砂などの運搬業務
・船舶や航空機など土地に定着しない工作物の建造
・建設資材(生コン、ブロック等)の納入
・工事現場の養生(換気扇にビニールをかぶせる、窓にシートを張るなど。はつり工事はとび・
土工工事)
・トラッククレーンやコンクリートポンプ車リース
(ただし、オペレータ付きリースは工事に該当する)

 

この中に「船舶や航空機など土地に定着しない工作物の建造」とありますが、フェリーの内装工事はまさしくこれに該当しますので、建設工事には該当しないということになります。

フェリーの内装工事は分かりやすい例ですが、造船において行う作業には、建設工事に近い作業も多くあります。ではなぜ造船は建設工事に該当しないのでしょうか。それは上記の通り、船が「土地に定着しない工作物」だからです。

このため、同じ内装工事でも、住宅やマンションといった建築物の内装工事は建設工事 (内装仕上工事)となりますが、フェリーの内装工事は建設工事には該当しません。

 

委託契約の場合、建設業許可は不要なのか?

 

契約書のタイトルや条文に「委託契約」と書いてあれば、「請負契約」では無いとして、建設業許可は不要になるのでしょうか。

ポイントは、契約書のタイトルではなく契約内容で判断することです。

 

請負契約とは

 

民法632条では、請負契約について、当事者の一方が仕事を完成することを約束し、もう一方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する契約、と規定しています。

これを建設業で考えてみると「仕事の完成」は建設工事の完成(住宅の新築、空調設備、道路の補修など、依頼を受けた土木・建築物の完成)を指していると解することができます。つまり、建設工事の請負契約とは、当事者の一方が建設工事を完成することを約束し、もう一方が建設工事の完成に対して報酬を支払うことを約束する契約ということになります。

 

▼民法

(請負)

第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 

委託契約とは

 

民法上の契約類型には「委託契約」というものはありません。一般的に、委託契約はその内容によって「委任(準委任)」もしくは「請負」のいずれかに該当するものとされています。

「委任」は、民法643条で、当事者の一方が法律行為(例:契約)をすることを契約の相手に委託し、その相手がこれを承諾する契約、と規定されています。また法律行為でない事務の委託は、民法656条に規定されている「準委任」に該当します。

「請負」は完成する責任を負う契約、「委任(準委任)」は依頼されたことを遂行する責任を負う契約であるといえます。

▼民法

(委任)

第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

(準委任)

第六百五十六条 この節の規定は、法律行為ではない事務の委託について準用する。

 

契約書のタイトルだけで判断しない

 

建設工事は一般的に「建設工事請負契約書」等のタイトルで契約書が交わされていますが、中には「業務委託契約」や「売買契約」等として「請負」という言葉を使わないケースがあります。建設業許可がないために、建設工事の請負であることを意図的に隠すために行う悪質なケースや、機械の売買契約によって機械を購入したら機械の設置工事も含まれているようなケース等です。

しかしながら、建設業法第24条では契約書のタイトルではなく、「報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約」を建設工事の請負契約とみなすと規定されています。契約書のタイトルではなく、実態として、建設工事の請負契約だと判断されれば、当然建設業法の規定が適用されることとなります。

そもそも、建設工事である以上「完成を要しない工事」というのはほとんど存在しないと思われます。契約書のタイトルではなく契約内容によって判断することが重要です。

▼建設業法

(請負契約とみなす場合)

第二十四条 委託その他いかなる名義をもってするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する。

 

 

附帯工事とは?

 

附帯工事は建設業許可が無くても請け負える工事ですが、附帯工事の判断を誤ると、建設業法違反になってしまいます。以下で確認していきたいと思います。

 

建設業許可が無くても請け負える工事とは?

 

建設業法において、建設業許可がなくても請け負うことができる工事が2種類あります。一つは軽微な工事、もう一つは附帯工事です。建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事(附帯工事)を請け負うことができるとされています。

附帯工事とは、次のいずれかに該当する工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいいます。

➀主たる建設工事を施工するために必要な他の従たる建設工事

➁主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事

 

附帯工事は金額に関係なく、500万円以上であっても無許可で請け負うことができますが、許可を受けた建設業に係る建設工事(主たる建設工事)と主従の関係にあるため、原則として附帯工事の金額が主たる建設工事の金額を上回ることはありません。

▼建設業法

(附帯工事)

第四条 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。

 

※軽微な建設工事:軽微な建設工事とは次の➀➁の建設工事のことをいう。

➀建築一式工事は、1件の請負代金が、1,500万円(消費税及び地方消費税を含む) 未満の工事または請負代金の額に関わらず、木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事

➁建築一式工事以外の工事は、1件の請負代金が500万円(消費税及び地方消費税を含む) 未満の工事

 

附帯工事の判断方法

 

国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」では、「附帯工事の具体的な判断に当たっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり一連又は一体の工事として施工するこ
とが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討する。」と記載されていますが、これではどう判断していいか余計に悩ましいです。

国土交通省 建設業法令遵守ガイドライン

附帯工事をかみ砕いて表現すると、「建設業許可を受けて行うメインの工事を施工するために、どうしてもくっついてきてしまう切り離せない建設工事のこと」という形になります。

附帯工事の事例をいくつか挙げてみます。事例によって、附帯工事の判断についてイメージを掴んでみましょう。

▼附帯工事の事例

作業の内容

主たる工事

(許可業者)

附帯工事
➀室内の電気配線の修繕工事をするために行う壁剥がし・壁貼り工事電気工事内装仕上工事
➁建物の外壁塗装工事をするために行う足場工事塗装工事とび・土工・コンクリート工事
③ビルのエレベーター設置工事をするために行う電気配線工事機械器具設置工事電気工事
➃駐車場の舗装工事をするために行う造成工事舗装工事とび・土工・コンクリート工事

 

これらの附帯工事はすべて主たる工事を施工するために「どうしてもくっついてきてしまう切り離せない建設工事」です。附帯工事だけでは意味を成さず、主たる工事と附帯工事が一体となって、初めて意味を成すものです。附帯工事はあくまでも主たる工事を施工するための特例措置であると捉えて、なんでもかんでも附帯工事として請け負うことはやめましょう。

自社で行う工事が附帯工事にあたるか判断がつかない場合は、各地方整備局や各都道府県の建設業担当部局に問い合わせをされることをおすすめします。

 

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