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産業廃棄物収集運搬業許可について

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産業廃棄物収集運搬業許可について

2021年03月26日
産業廃棄物収集運搬業許可について

事業者や建設工事現場から出る産業廃棄物は、一般的な廃棄物よりも厳しい条件で処理されています。

大量に産業廃棄物が出ることや、ものによっては周囲に様々な影響を与えるため、収集運搬などにも許可や資格が必要となります。

そこで必要となってくるのが「産業廃棄物収集運搬業許可」です。今回は許可の内容や注意点、契約書やマニフェストなどを見ていきます。

 

産業廃棄物とは

 

廃棄物の処理は法令で定める厳しい基準に基づいて行われます。

その法令とは、1970年に制定された廃棄物処理法であり、廃棄物の排出抑制や適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分などの処理により、生活環境を保全することを目的としています。

この法令で、「廃棄物」とは、「自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物」で廃棄物に該当するかは「その物の性状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断するべきものであること」と定義されています。

また、これらの廃棄物は性状や毒性等により所管する法律が異なっていますが、ほとんどの廃棄物は、産業処理法によって規定され、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの」と定められています。

これは廃棄物全体の規定であって、一般廃棄物と産業廃棄物の2種類に分けられます。それぞれ処理責任や処理方法、処理を行う業者などが異なるため、2種類に分けられています。

廃棄物処理法が制定された1970年は高度経済成長期であり、様々なものが生み出されました。

一方で多くの廃棄物も排出されることとなり、公衆衛生だけでなく公害も発生するなど大きな問題となりました。

それを受け政府は公衆衛生の向上や公害問題対策、生活環境の改善などを目指し、厳しい基準を設けています。

 

廃棄物の分類

 

廃棄物
廃棄物処理法の対象である不要物
産業廃棄物
事業活動で発生したもののうち、規定されている20種類
特別管理産業廃棄物
産業廃棄物のうち、特に指定された有害なもの
一般廃棄物
産業廃棄物以外のもの
 事業系一般廃棄物事業活動で発生した、産業廃棄物以外のもの
 家庭廃棄物一般家庭の日常生活から発生したもの
特別管理一般廃棄物一般廃棄物のうち、特に指定された有害なもの

 

 

産業廃棄物とは、廃棄物の中でも事業活動に伴って生じたもののうち廃棄物処理法で規定されている20種類となります。

 

許可が必要となる産業廃棄物

 

産業廃棄物は、「産業廃棄物」と「特別管理産業廃棄物」の2種類に分類されます。

産業廃棄物収集運搬許可が必要な産業廃棄物は以下の表の通りになっています。(大阪の手引きより)

 

▼産業廃棄物

産業廃棄物の種類

「あらゆる事業活動に伴うもの」については業種関係なく、事業活動で排出されたものは、ほとんどが産業廃棄物になりますが、「特定の事業活動に伴うもの」においての7業種は、業種によって排出されても事業系一般廃棄物として処理されます。

 

これに対し、特別管理産業廃棄物は「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」であり、通常の廃棄物よりも厳しい規制を設けています。
(特別管理産業廃棄物のうち特定有害産業廃棄物としても分類されているものもあります)

 

特定産業廃棄物1

 

このように細かく分類されています。

特定管理産業廃棄物は、産業廃棄物収集運搬業の許可では収集運搬はできません。

これらの種類の産業廃棄物で、他人の産業廃棄物を業として、収集・運搬する場合には、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要となるのです。

 

産業廃棄物収集運搬業の許可について

 

今回は、許可の中でも一般的な「産業廃棄物収集運搬業許可(積替え又は保管なし)」の新規申請について大阪の手引きを基に見ていきます。

産業廃棄物収集運搬業の許可も人やお金、設備等の要件があります。

 

産業廃棄物収集運搬業許可の要件

 

(1)収集運搬の用に供する施設

 

申請者は、下記の基準に従って必要な施設(運搬車・運搬機器等)を有する必要があります。

①産業廃棄物が飛散し、及び流出し、並びに悪臭が漏れるおそれのない運搬車、運搬船、運搬容器その他の運搬施設を有すること。
②石綿含有産業廃棄物は破砕することのないような運搬方法をとり、他の廃棄物と混合しないよう、区分して運搬すること
③水銀使用製品産業廃棄物は破砕することのないような運搬方法をとり、他の廃棄物と混合しないよう、区分して運搬すること。
④ 水銀含有ばいじん等は、運 搬中に揮発した水銀が運搬容器又は梱包から漏れることのないような措置をとり、高温にさらされないよう運搬すること。

 

例えば、車両が土砂等の積載禁止と記載があれば、がれき類等は運べませんし、液状の汚泥などを運ぶ場合でしたら、密閉性のある容器が必要になってきます。すなわち、ダンプトラック、吸引者等の車両、ドラム缶、フレキシブルコンテナバック等の容器などを産業廃棄物の性状、形状、量に応じて用意する必要があります。

また車両に関しては、継続して使用権原を有していて、自動車検査証の使用者と申請者が同じである必要があります。

異なる場合は、車両の賃借に関する証明書により使用の権限を明らかにする必要があります。

 

(2)産業廃棄物処理業許可取得のための講習会

 

次に掲げる者が、下記の講習会を修了等していることが必要です。

➀申請者が法人の場合

代表者又は産業廃棄物の処理に関する業務を行う役員もしくは業を行おうとする区域に所在する事業場の代表者。

➁申請者が個人の場合

当該者又は業を行おうとする区域に所在する事業場の代表者。

 

これは「公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター」の講習会で収集運搬課程(新規)を受講し、修了書の交付を受けなければなりません。

この講習会を受けるのは従業員であれば誰でもいいわけではなく、法人の場合は代表者または役員、個人であればその代表者である必要があります。

 

(3)経理的基礎

 

申請にあたっては、産業廃棄物の収集又は運搬を的確に、かつ、継続して行うに足りる経理的基礎を有することが必要です。

債務超過でないことや法人税(個人の場合は所得税)の滞納が無いこと、事業資金を確実に調達できる見込みがあることなどを総合的に見られます。

 

(4)欠格要件

 

申請者(法人の役員、株主又は出資者、政令で定める使用人も対象)が、破産者や暴力団員ではないことや、精神の機能の障害により、廃棄物の処理の業務を適切に行うことができない、などが欠格要件に該当します。

 

申請先

 

申請先は管轄の都道府県です。大阪であれば大阪府咲洲庁舎の循環型社会推進室産業廃棄物指導課というところへ申請書を提出しに行きます。

大阪の場合、大阪市、堺市、東大阪市、高槻市、豊中市、枚方市、八尾市、寝屋川市、吹田市のそれぞれの範囲内だけで産業廃棄物の収集運搬業(積替え又は保管を含まない)を行うのであれば、それぞれの市のみの許可が必要です。それを超えて産業廃棄物の収集運搬業を行うのであれば、大阪府の許可が必要です。

つまり、大阪市のみだけで産業廃棄物の収集運搬業を行うのであれば、大阪市のみの許可、大阪市と茨木市や門真市や色々現場によって変わるという場合は、大阪府の許可が必要になります。

また大阪府内で産業廃棄物の収集を行って、それを京都の最終処分業者に持って行くという場合は、京都の許可も必要になってきます。産業廃棄物を積む場所と降ろす場所、それぞれの都道府県の許可が必要になってくるという訳です。

 

審査について

 

審査には大阪の場合、約60日かかります。

許可が下りた場合にもらえる許可証は、咲洲庁舎に直接取りに行くか、郵送で受け取るか選べます。

 

有効期限について

 

産業廃棄物収集運搬業の許可は、5年間有効です。引き続き事業を営みたい場合は、許可期限満了日の2~3ヵ月前までに、更新許可申請をしなければなりません。大阪の場合、3ヵ月前から更新の受付が始まります。

許可期限の2ヵ月前までに申請しなかった場合、事務処理の都合上、許可期限日までに新しい許可を発行できない場合があると大阪府の手引きに書いてあるので、許可期限満了日の3ヵ月前には更新の申請書類を提出できるようにしておきましょう。

更新の場合、更新のための講習会の修了書が必要です。3ヵ月前になって、書類はできているが、講習の修了書が無いと受け付けてもらえないので、講習会のスケジュールもしっかと把握し、更新準備をしましょう。

 

 

自社運搬について

 

自ら出したゴミを自ら運搬するのであれば、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要です。

しかし何も基準が無いわけではありません。そもそも何が自社運搬に当たるのかなどについて触れていきたいと思います。

 

「自社運搬」であれば許可不要

 

産業廃棄物の収集運搬を他人から委託を受けて、業として行おうとする者は、業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければなりません。

逆を言えば、自社運搬、「自ら排出した廃棄物を自らが運搬する」場合は、廃棄物収集運搬業許可は不要になります。

廃棄物処理法では、建設工事現場で発生した建設廃棄物の排出事業者は、常に「元請業者」です。「元請業者」が自ら建設廃棄物を排出し、自ら収集して処分業者などに運搬する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可は不要です。

下請業者が下請の立場で工事を行った際に出た建設廃棄物を、建設工事現場外に運搬する場合は、運搬先がどこであるかに関わらず「他人の(排出事業者である元請業者の)産廃」を運搬することになるので、収集運搬許可が必要になってきます。

許可が不要な自社運搬であっても、廃棄物処理法第12条に「事業者は、自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準に従わなければならない」とあるように、それが自社運搬だろうが他社からの依頼を受けた運搬だろうが、「産業廃棄物の収集、運搬に関する基準」を遵守しなくてはなりません。

 〇産廃を自社運搬する場合の3つの義務(廃棄物処理法施行規則第7条の2の2)

1.飛散・流出・悪臭・騒音・振動など生活環境の保全上支障が生じないように必要な措置を講ずること

2.法定された書類を出すこと

3.車両に法定された表示をすること

 

自社運搬の例(収集運搬の許可が不要)

 

・解体工事現場で出た木くずを、元請業者が中間処理場に運搬

・大阪府内にあるA工場で排出された汚泥を、A工場の従業員自ら委託契約を締結している汚泥の中間処分場に運搬

 

他人の産廃を運搬する例(収集運搬の許可が必要)

 

下請として入っている解体工事現場で出たコンクリート破片を下請業者が現場外の元請業者が用意した保管場所に運搬

・下請として入った解体工事現場で出た蛍光灯を下請業者が中間処分場に運搬

昨日は元請で今日は下請で現場に入ったからコンテナには元請、下請関係なく一緒くたになって入っているよ、という場合、下請の現場で出た産廃は、工事現場から一切持ち出せません。

排出事業者である元請業者は、下請業者または孫請業者と収集運搬の委託契約を、処分業者とは処理委託契約をそれぞれ締結し、マニフェストを交付しなければなりません。

孫請業者は下請業者と委託契約を締結するわけではなく、あくまでも元請業者と締結します。

下請業者(孫請業者)が産業廃棄物収集運搬業許可を受けずに建設廃棄物を運搬した場合、当事者はもちろん元請業者にも罰則が適用されます。

 

 

マニフェストについて

 

マニフェスト制度は、産業廃棄物の委託処理における排出事業者責任の明確化と、不法投棄の未然防止を目的として実施されています。産業廃棄物は、排出事業者が自らの責任で適正に処理することになっています。その処理を他人に委託する場合には、産業廃棄物の名称、運搬業者名、処分業者名、取扱い上の注意事項などを記載したマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付して、産業廃棄物と一緒に流通させることにより、産業廃棄物に関する正確な情報を伝えるとともに、委託した産業廃棄物が適正に処理されていることを把握する必要があります。

 

マニフェストの流れと運用方法

 

マニフェストの流れ

出展元:財団法人食品産業センターHP

 

マニフェストの運用方法

➀(排出事業者)⇒(収集運搬業者1)
排出事業者がマニフェストに必要事項を記入します。
産業廃棄物を収集運搬業者に引き渡す時、A~E票をすべてを渡して記載事項をお互いに確認します。
運搬担当者からA~E票すべてに署名捺印をもらい、A票を控えとして保管します。

➁(収集運搬業者1)⇒(中間処理業者)
収集運搬業者は、産業廃棄物を中間処理業者に引き渡す時、B1~E票を渡し、処理担当者から署名捺印をもらいます。
B1票とB2票を受け取り、B1票を控えとして保管します。

➂(収集運搬業者1)⇒(排出事業者)
収集運搬業者は、運搬終了後10日以内に署名捺印されたB2票を排出事業者に返送します。

➃(中間処理業者)⇒(排出事業者/収集運搬業者1)
中間処理業者は、処理終了後10日以内にD票を排出事業者に、C2票を収集運搬業者に返送します。

➄(中間処理業者)⇒(収集運搬業者2)
ここから先は、中間処理業者が新たに排出事業者になってマニフェストを交付します。

➅(収集運搬業者2)⇒(最終処分業者)
収集運搬業者は、産業廃棄物を最終処分場に引き渡す時、B1~E票を渡し、処分担当者から署名捺印をもらいます。
B1票とB2票を受け取り、B1票を控えとして保管します。

➆(収集運搬業者2)⇒(中間処理業者)
収集運搬業者は運搬終了後10日以内に署名捺印されたB2票を、排出事業者である中間処理業者に返送します。

➇(最終処分業者)⇒(中間処理業者/収集運搬業者2)
最終処分業者は、処分終了後10日以内に最終処分終了の記載(最終処分の場所の所在地及び最終処分年月日を記載)したD票とE票を排出事業者である中間処理業者に、C2票を収集運搬業者に返送します。

➈(中間処理業者)⇒(排出事業者)
中間処理業者は、最終処分終了の旨を記載されたE票を受け取った場合、排出事業者が交付したE票に、最終処分終了の記載を転記して、10日以内に排出事業者に返送します。

マニフェストは産業廃棄物の種類ごとや運搬先ごとに交付しなければなりません。種類(石綿含有物を含む場合はその旨)、数量、受託者の氏名、名称、管理票交付担当者名を確認した後に交付してください。
マニフェストの交付義務があるのは、排出事業者であり産業廃棄物の処理業者側ではありません。

 

マニフェストの保存義務

 

排出事業者、収集運搬業者、処理業者には、それぞれマニフェストの写しを保管する義務があります。

 

マニフェスト保存義務者     保存期間 
    A票     委託者(排出事業者) マニフェスト交付日より5年
         B1票                    収集運搬業者     法的な保存義務は無し
         B2票                    委託者(排出事業者)     写しの送付を受けた日から5年
         C1票                    処分業者     写しを送付した日から5年 
         C2票                    収集運搬業者     写しの送付を受けた日から5年
    D票                    委託者(排出事業者)     写しの送付を受けた日から5年
E票                    委託者(排出事業者)    写しの送付を受けた日から5年

 

繰り返しになりますが、マニフェストの発行は、排出事業者の義務です。

そして処理業者(収集運搬処理業者、中間処理業者、最終処理業者)が、マニフェストの交付を受けずに産業廃棄物処理を引き受けることは法律違反になり、罰則が科せられます。

排出事業者はマニフェストの発行を、処理業者はマニフェストの受け取りを徹底し、産業廃棄物処理を安全に行いましょう。

 

 

産業廃棄物の委託契約書

 

産業廃棄物の委託処理業者が決まったら、排出事業者は委託処理業者と「産業廃棄物処理委託契約」を締結しなければなりません。

廃棄処理法では、廃棄処理を外部に委託する場合の「委託基準」を定めており、以下のようになってます。(委託基準は産廃と一廃では異なります)

 

▼委託基準

    委託基準の内容    産廃    一廃
許可業者等への委託  〇  〇※
許可の事業の範囲内で委託  〇  〇
委託契約書の作成と許可書の添付  〇  不要
契約書を契約終了日から5年間保存  〇  不要 
再委託の承諾書写しを5年間保存  〇  不要

(※)市町村への委託も可

 

1回だけの依頼でも契約書はいるのか?

 

単発、一回だけであっても例外なく「委託基準」を守らなければなりません。

委託業者が不法投棄をして、排出事業者にそれらの原状回復命令が来たとき、委託契約書がありませんではどうしようもありません。

 

罰則を受ける対象は?

 

廃棄物処理法では、「産業廃棄物の委託契約書を締結する義務は、排出事業者にある」と規定されており、排出事業者と処理業者との間で交わされた委託契約書に不備があった場合、罰則を受けるのは、「排出業者」になります。

契約書の草案を処理業者が提供し、排出事業者は印鑑を押すだけということも一般的に行なわれていますが、内容に不備があっても責任はすべて排出事業者にあります。

よからぬ事態が生じて行政から委託契約書の不備を指摘された場合、処理業者が作った書類だからという抗弁は通用しません。

 

契約はそれぞれと

 

排出事業者が、産業廃棄物の「収集運搬」と「中間処理」のそれぞれを処理業者に委託する場合は、

収集運搬については、『排出事業者と収集運搬業者』
中間処理については、『排出事業者と中間処理業者』
が、二者間で直接契約をします。

収集運搬と処分の契約書を別個に作成するのが面倒なので、排出事業者・産業廃棄物収集運搬業者・産業廃棄物処分業者の三者間で契約書を作成したくなりますが、三者間の契約は認められていません。

 

産廃契約

収集運搬業者と中間処理業者の間には契約はありません。

ただし収集運搬と中間処理を同じ処理業者が行なう場合は、まとめて一つの契約書で契約することができます。

中間処理後の残さの処分に関しては、中間処理業者が排出事業者になりますので、中間処理業者と最終処分業者との間で処理委託契約を締結しますから、排出事業者が最終処分業者と処理委託契約を締結する必要はありません。

ただし、2000年の廃棄物処理法及び施行令改正により、排出事業者責任を最後まで徹底させるために委託契約書とマニフェストの法定記載事項が追加され、「最終処分場所の情報の記載」が義務付けられましたので、排出事業者は自分の排出した産業廃棄物の最終処分先までの流れを確認する必要があります。

 

委託契約書の法定記載事項

 

次の図に示す8つの事項は、「収集運搬委託」「中間処理委託」「最終処分委託」の別を問わず、すべての委託契約書に記載しなければなりません。

産廃委託契約書

 

 

法定記載事項8項目(省略はできません!)

 

➀委託する産業廃棄物の種類と数量

委託する産業廃棄物が20種類のうちどれに該当するかを記入します。

産業廃棄物の種類はこちら→産業廃棄物収集運搬業許可についてその1

複数の産業廃棄物が一体不可分となった混合廃棄物を処理委託する場合は、契約書の種類欄に産業廃棄物の種類をひとつずつ明示しますが、数量についてはその混合廃棄物の台数を記載してかまいません。

例えば廃棄するシュレッダーを処理委託する場合、「廃プラスチック類」「金属くず」「ガラ陶」の3種類の産業廃棄物を処理委託することを契約書に明記する必要がありますが、数量は「シュレッダー3台」と記載します。

産業廃棄物の数量は、1日あたり、1か月あたり、又は1年あたりの予定数量を記載します。

予定数量は、計量した重量や容積を記載することが原則ですが、「2トントラック:3台分」、「200Lオープンドラム缶:5本分」、「1000Lフレコンバック:7個分」というような記載も可能です。

➁委託者が受託者に支払う料金

定期的に処理料金が変動する場合には、委託料金記入欄に「別途覚書書によって決定」と記載し、添付資料として覚書を必ず委託契約書と一緒に保存することが必要です。

契約書の「委託料金」の欄を空欄にしておくと、不適正処理に巻き込まれた際に行政等から調査を受けた場合、不法投棄をされても仕方がないような安値で処理委託していたとみなされることがあるので、注意が必要です。

③適正処理のために必要な情報

WDS(廃棄物データシート)を添付してもかまいません。

1.産業廃棄物の性状・荷姿

2.通常の保管状況下での腐敗、揮発等の性状変化の情報

3.混合等により生ずる支障

4.含有マーク表示がある場合はその旨※

5.石綿含有産業廃棄物が含まれる場合はその旨

6.その他取り扱いの際に注意すべき事項

④上記3の情報に変更があった場合の伝達方法

原料や製造工程等が変わって、提供していた産業廃棄物が変更になった場合は、メールやファックス等で連絡し、直ちに変更後の情報に基づいたWDS(廃棄物データシート)等を書面で提供する必要があります。

⑤受託業務終了時の委託者への報告

通常は、「処理終了年月日が記載されたマニフェストの返送をもって業務終了の報告とする」という記載が一般的です。

ただし、産業廃棄物の処理を「専ら業者」に委託した場合は、専ら業者の特例によりマニフェストの運用は不要となりますので、マニフェストに代わるもので受託業務終了の報告をしなければなりません。

専ら物であっても受託業務終了報告のためにマニフェストを使用してもかまいませんが、「月次ことに集計し、翌月の10日までに前月分の処理状況を書面で報告する。」という契約であってもかまいません。

⑥委託契約解除時の未処理廃棄物の取り扱い

どちらの責任で処理するかを当事者間で事前に決めておく必要があります。

⑦委託契約の有効期間

契約書の雛形の多くは「〇〇年〇月〇日~△△年△月△日」のように期限をきっちり記載していますが、再契約の手間と印紙代の節約もかねて自動更新の条項を入れることも可能です。

⑧受託者の許可の事業の範囲 

「添付する許可証のとおり」と記載し、許可証の写しを契約書に必ず添付します。

 

※含有マーク(日本工業規格C0950号に規定する含有マークの表示)

資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)に基づいて、含有物質を含有する製品等については、日本工業規格(JISC0950)に規定する含有マーク等による表示が平成18年7月1日より義務付けられています。

【対象となる製品】

1.パーソナルコンピューター

2.ユニット形エアコンディショナー

3.テレビジョン受信機

4.電子レンジ

5.衣類乾燥機                 含有マーク                

6.電気冷蔵庫

7.電気洗濯機

【対象となる有害物質】

1.鉛又はその化合物

2.水銀又はその化合物

3.カドミウム又はその化合物

4.六価クロム化合物

5.ポリブロモビフェニル(PBB)

6.ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)

 

中間処理の委託契約書のみの法定記載事項

 

【中間処理の法定記載事項】

1.中間処理場の所在地

2.中間処理の方法

3.中間処理施設の処理能力

4.中間処理残さを最終処分する場所は、

・最終処分する場所の所在地

・最終処分する方法

・最終処分する処理能力

5.輸入された廃棄物であればその旨

 

委託契約書への添付書類

 

許可書の写し

委託契約書には、委託先処理業者の「許可証の写し」を添付してセットで保存する義務があります。

WDS(廃棄物データシート)

環境省の廃棄物情報の提供に関するガイドライン等

参考→廃棄物情報の提供に関するガイドライン

        廃棄物データシート及び記載方法

安全な産業廃棄物処理のためには、産業廃棄物の性状や含有物質の情報は必要不可欠ですから、WDSの内容に変更があった場合は、排出事業者から委託処理業者に対し、適切に情報提供を行い、最新のWDSを契約書とともに保管します。

この際、WDSの変更日と委託処理業者への情報提供日及び情報提供手段等を記録に残す必要があります。

 

 

今回は産業廃棄物収集運搬業許可について見ていきました。

産業廃棄物は環境に与える影響も大きいため、厳しい法の管理の下で適正に処理されなければなりません。

きちんとルールを守り、法を遵守し、処理しましょう。

 

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