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下請業者に見積りを依頼する際のルール

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下請業者に見積りを依頼する際のルール

2021年09月08日
下請業者に見積りを依頼する際のルール

工事の依頼をする際には、どのくらいの金額がかかるか見積りを依頼すると思いますが、この見積りにも建設業法にてルールが決まっています。

 

 工事の見積書 記載事項や見積り期間について

 

工事の見積り依頼を下請業者に口頭で依頼されている業者さんもいらっしゃると思いますが、それで下請業者は適正な見積りができるのでしょうか?

 

見積りの依頼は書面で行う

 

建設業法では、見積依頼を書面でしなければならないという規定はありません。しかしながら、元請業者が下請業者に見積りを依頼する際には、工事についてできる限り具体的な内容を提示しなければならないと規定されています。

また、国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインでは、書面によりその内容を示すことが望ましいとされています。

元請が下請に見積りを依頼する際には、工事について具体的な内容を記載した書面で行うようにしましょう。

▼書面で具体的内容を提示する

1.見積条件の提示(建設業法第20条第3項)

~中略~

(2)望ましくは、下請契約の内容は書面で提示すること、更に作業内容を明確にすること

 元請負人が見積りを依頼する際は、下請負人に対し工事の具体的な内容について、口頭ではなく、書面により

 その内容を示すことが望ましく、更に、元請負人は、「施工条件・範囲リスト」(建設生産システム合理化推進

 協議会作成)に提示されているように、材料、機器、図面・書類、運搬、足場、養生、片付、安全などの作業内

 容を明確にしておくことが望ましい

 

 

書面に記載する事項

 

見積依頼を書面でする場合、工事の具体的な内容とは何を指すのでしょうか。建設業法第20条では、「第19号第1項第1号及び第3号から第16号までに掲げる事項について、できる限り具体的な内容を提示」しなければならないとされています。

「第19条第1項第1号及び第3項から第16号までに掲げる事項」とは、建設工事の請負契約書に記載しなければならないとされている事項のうち、「第2号 請負代金の額」を除く事項のことをいいます。具体的には次の事項です。

▼具体的内容を提示しなければならない事項

第1号工事内容
第2号 請負代金の額
第3号工事着手の時期及び工事完成の時期
第4号工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
第5号請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
第6号 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
第7号天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
第8号価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
第9号工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
第10号注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
第11号注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
第12号 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
第13号工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
第14号各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
第15号契約に関する紛争の解決方法
第16号その他国土交通省令で定める事項

 

この事項だけを記載しておけば良いというわけでなく、下請負人が適正な見積りができるよう、より詳しく提示することが大事です。例えば、「第1号 工事内容」に関しては、先ほども出てきた「建設業法令遵守ガイドライン」において、次の事項が最低限明示すべき事項とされています。

① 工事名称
② 施工場所
③ 設計図書(数量等を含む)
④ 下請工事の責任施工範囲
⑤ 下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体工程
⑥ 見積条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
⑦ 施工環境、施工制約に関する事項
⑧ 材料費、労働災害防止対策、産業廃棄物処理等に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項

 

見積りの期限について

 

元請が下請に対して見積依頼をする際には、一定の見積期間を設けなければならないとされています。

 

見積期間は決まっている

 

下請業者が適正に見積りを行うことができるよう、元請業者は見積依頼の際に建設業法で定められた見積期間を設けなければなりません。

見積期間は、発注予定価格の額に応じて、次のとおり決められています。

▼見積期間

下請工事の予定価格見積期間
➀500万円未満1日以上
➁500万円以上5,000万円未満10日以上※
③5,000万円以上15日以上※

※➁③の場合、やむを得ない事情があるときに限り、見積期間を5日以内に限り短縮することができます。

 

見積期間の考え方

 

見積期間は、下請負人に対する契約内容の提示から、請負契約の締結までの間で設けなければならない期間です。上の表の「1日以上」「10日以上」「15日以上」という見積期間は、それぞれ「中〇〇以上」と考えます。

例えば、4月1日に元請負人が契約内容の提示をし、下請負人に対して見積依頼をした場合、契約締結日は最短で次のとおりになります。

➀500万円未満の場合  4月3日

➁500万円以上5,000万円未満の場合  4月12日

③5,000万円以上の場合 4月17日

 

見積期間は、契約内容の提示から請負契約締結までの最短期間とされていますが、下請保護の観点から、契約内容の提示から下請業者の見積提出までの最短期間と捉えていただく方がよりよいと言えるでしょう。

これらの見積期間は、下請負人が見積りを行うための最短期間であるため、この期間に囚われず、十分な見積期間を設けることが望ましいとされています。

 

曖昧な見積期間の設定等は建設業法違反

 

次のようなケースでは建設業法違反となるおそれがありますので、注意が必要です。

・元請業者が下請業者に対して、「今日中に見積書を提出してくれ」という見積依頼をした

・元請業者が下請業者に対して、「できるだけ早く見積りが欲しい」等の曖昧な見積期間を設定した

・元請業者が下請業者に対して、予定価格が1,000万円の工事の見積り依頼をする際、見積期間を5日間と設定した

なお、見積期間は、元請業者が下請業者に対して見積依頼をする際に設定しなければならない期間のことですので、下請業者が自主的に見積りを早く行い、設定された見積期間よりも早く見積書を提出することは問題ありません。

 

 

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