行政書士船場事務所

0662240886
営業時間9:00- 18:00 土日祝休み

24.工事の請負契約書について

column
船場事務所 » コラム » 各種変更・更新・管理 » 24.工事の請負契約書について

24.工事の請負契約書について

2021年02月02日
24.工事の請負契約書について

建設業許可に必要になる書類の一つに、今まで行ってきた工事の注文書や契約書があります。

お客様にこれをお伝えするとよく返ってくるのが「口約束でやってるところも多いからなぁ、契約書どころか注文書も無いわぁ。」というものです。

ということで、今回は請負契約のルールや記載すべき内容について見ていきたいと思います。

 

請負契約書について

 

請負契約は書面により行わなければならない

 

建設業法では、建設工事の請負契約の明確性及び正確性の担保及び建設工事の請負契約の当事者間の紛争発生の防止のため、書面で請負契約を締結することを求めています。

建設業法で定められた一定の事項を記載した書面に、請負契約の当事者がそれぞれ署名又は記名押印をして、相互に書面を交付しなければなりません。書面での契約締結の方法には次のものがあります。

➀請負契約書を交わす方法

➁基本契約書を交わし、注文書・請書を交換する方法

➂注文書・請書の交換のみによる方法

どの方法であっても、一定事項を記載された書面で、署名又は記名押印をして、相互に書面を交付するということがポイントです。署名又は記名押印がされない場合や注文書のみを交付し請書は交付しない等相互に書面が交付されないような場合には建設業法違反となります。なお、一定の基準をクリアした電子契約による方法も認められています。

 

契約書に記載すべき事項

 

合意内容に不明確、不正確な点がある場合、紛争の原因となってしまいますので、請負契約書等には、建設業法で定められた一定の事項を記載することになっています。

 

▼契約書に記載すべき事項

第1号 工事内容
第2号 請負代金の額
第3号 工事着手の時期及び工事完成の時期
第4号 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
第5号 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
第6号 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
第7号 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
第8号 価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
第9号 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
第10号 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
第11号 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
第12号 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
第13号 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
第14号 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
第15号 契約に関する紛争の解決方法
第16号 その他国土交通省令で定める事項

※建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)対象工事の場合は、次の4項目も追加記載が必要です。

➀分別解体の方法

➁解体工事に要する費用

③再資源化するための施設の名称・所在地

➃再資源化等に要する費用

※「① 工事内容」については、下請負人の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要があるので、○○工事一式といった曖昧な記載は避けるべきである。

 

これらの項目が全て網羅された請負契約書等で契約を締結しなければなりません。契約締結方法により、それぞれの正面に記載すべき事項が変わります。

➀請負契約書を交わす方法

 請負契約書に第1号から第16号の項目を記載する

➁基本契約書を交わし、注文書・請書を交換する方法

 基本契約書に第4号から第16号の項目を記載する。

 注文書・請書のそれぞれに第1号から第3号の項目を記載する。

③注文書・請書の交換のみによる方法

 注文書・請書のそれぞれに第1号から第16号の項目を記載する。

 もしくは、第1号から第3号の項目を記載した注文書・請書のそれぞれに第4号から第16号の項目を記載した約款

 を添付する。

 

一からこれらの項目が記載された請負契約書等を作成することは大変です。建設業法の基準をクリアした請負契約書が欲しいという場合には、国土交通省の中央建設業審議会が作成している「建設工事標準請負契約約款」民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会が発行してる「工事請負契約約款」を活用されることをお勧めします。

 

 

FAXやメールでの注文書・請書のやりとりについて

 

契約書等には署名又は記名押印が必要

 

 建設業法第19条では「契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」と定められています。

 これはつまり、署名又は記名押印がされた書面の原本を、注文者(元請負人)と請負人(下請負人)のそれぞれに交付しなければならないということです。

 原本でなければ請負契約書の内容の改変が容易にできてしまい、後で紛争の原因となってしまうことが考えられます。そのため、署名又は記名押印された書面の原本の交付が義務付けられています。FAXやメールでの注文書・請書を送信するという方法では、契約の相手方に注文書・請書のコピーが送信されることになるため認められていません。

 

▼建設業法

(建設工事の請負契約の内容)

第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の主旨に従って、契約の締結に際して次の掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない

 

署名又は押印がなくても電子契約ならOK

 

国土交通省で定められた一定の基準をクリアした電子契約は、建設業法に適合するとされています。電子契約ですので、当然署名又は記名押印が必要です。

 

一定の基準とは、具体的には次の2つの技術的基準のことをいいます。

 

➀見読性の確保

 契約の相手が契約ファイルを印刷して書面にすることができること

➁原本性の確保

 契約ファイルに記録された契約事項について改変されていないことが確認できる措置が取られていること

 

これらの基準をクリアしている電子契約のシステムであれば、建設業法上問題なく電子契約で建設工事の請負契約の締結をすることができます。

電子契約システムの導入に当たっては、建設業法の基準を満たすかどうかについて、電子契約サービスを提供している各事業者にお問い合わせください。

 

印紙税を節約したい!

 

印紙税とは、契約書や領収書などの文書を作成した場合に、印紙税法という法律に基づいてその文書に課税される税金です。印紙税法で課税文書が定められており、建設工事の請負契約書や注文請書は課税文書とされています。

署名又は押印はあるものが課税文書となり、署名や押印のない写しは課税文書とされていません。そのため、印紙税の節約を目的として、FAXやメールで契約するケースのほか、書面でする場合でも次のような方法で契約が行われるケールがあります。

➀記名押印した請負契約書を1通作成し、下請負人にはその写しを交付する方法

➁元請負人から注文書のみ発行し、下請負人からは注文請書を発行しない方法

これらは建設業法違反とならないのでしょうか。答えは「建設業法違反となる」です。

 建設業法第19条では「署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」とされていますので、署名又は記名押印した書面が相互に交付されていない限り、建設業法違反となります。

 印紙税の節約を目的とするのであれば、電子契約による方法を取られることをお勧めします。電子契約による請負契約の締結は課税文書には該当せず、印紙税は課税されません。

 

無許可なので500万円の工事を500万円未満になるように契約書を分けていいのか

 

500万円以上の工事を請け負うには建設業許可が必要なので、500万円未満になるように1件の工事を分けて請け負っても問題は無いのでしょうか。以下で確認していきます。

 

500万円以上の工事には建設業許可が必要

 

建設業を営もうとする者は、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合を除いて、建設業許可を受けなければなりません。「軽微な工事」とは工事1件の請負金額が500万円未満の工事(建築一式工事の場合は、1件の請負金額が1,500万円の工事又は延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事)のことをいいます。

建設業許可には、29種類の業種があり、業種ごとに許可を受けることになりますので、軽微な建設工事を超える500万円以上の建設工事を請け負おうとする場合には、当該建設工事の業種に該当する建設業許可を受けていなければ、請け負うことができません。

 

▼適切な業種の許可がなければ請け負うことはできない

適切な業種の許可が必要

 

 

500万円未満になるように分割してはいけない

 

建設業許可がないからといって、500万円いじょうの建設工事をいくつかに分割して請け負うことはできません。

建設業法施行令第1条の2に「工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする」と記載されているとおり、分割して請け負ったとしても、分割した各契約の請負代金の額の合計額が請負代金の額となります。つまり、分割して請け負ったとしても、結局のところ、無許可で500万円以上の建設工事を請け負ったことと同じです。

 

▼建設業法施行令

(法第三条第一項ただし書の軽微な建設工事

第一条の二

~中略~

2 前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りではない。

~以下省略~

 

▼分割して請け負うときは合計金額が請負代金の額となる

分割して請け負うときは合計金額が請負代金の額となる

 

 

急な工事の場合でも、請負契約書が必要なのか?

 

例えば、急な水漏れなどで、すぐに対応しなければならない工事でも、請負契約書が必要なのでしょうか?

 

着工前に請負契約書等を交付しなければならない

 

建設工事の請負契約は、建設業法で定められた一定の事項を記載した書面に請負契約の当事者がそれぞれ署名又は記名押印をして、相互に書面を交付しなければなりませんが、請負契約締結のタイミングはいつでもよいというわけではありません。国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン(第7阪)-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-」(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001417721.pdf) では、契約者当事者間の紛争の発生を防止するため、災害時等でやむを得ない場合を除いて、原則として工事の着工前に行われなければならないとされています。

「災害等でやむを得ない場合」に該当するかどうかは、個別具体的に判断されることとなりますので、判断に迷うようなケースでは、許可行政庁へご相談ください。

▼請負契約締結のタイミング

2.書面による契約締結
2-1 当初契約(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3、第20
条第1項)

(1)契約は下請工事の着工前に書面により行うことが必要
建設工事の請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、対等な立場で契約すべきであり、建設業法第19条第1項により定められた下記(2)の①から⑮までの15の事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっている。
契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として下請工事の着工前に行わなければならない。
建設業法第19条第1項において、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して契約内容を書面に記載し相互に交付すべきことを求めているのは、請負契約の明確性及び正確性を担保し、紛争の発生を防止するためである。また、あらかじめ契約の内容を書面により明確にしておくことは、いわゆる請負契約の「片務性」の改善に資することともなり、極めて重要な意義がある。

出典:国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第7阪)-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-」(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001417721.pdf) 

 

追加・変更契約の場合も着工前に

 

当初の請負契約書等の内容に変更が生じた場合、その変更内容を記載した書面に、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。つまり、追加契約書や変更契約書のことです。

当初の請負契約が書面でされていたとしても、追加・変更契約が高騰でされることになれば、請負契約の明確性や正確性が担保されなくなってしまいます。そのようなことがないように、災害時等でやむを得ない場合を除き、工事の追加・変更等に関しても着工前に書面で契約を締結することが求められています。

契約当事者が追加・変更契約に関する協議を円滑に行えるようにするため、当初の請負契約書等おいて、建設業法第19条第5号の「当事者の一方から設計変更等の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め」について、出来る限り具体的に定めておくといいと思います。

▼建設業法

(建設工事の請負契約の内容)

第十九条

~中略~

2 請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

~以下省略~

 

追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応

 

工事の状況によっては、追加工事等の内容が着工前には確定できない場合があります。そのようなケースでは元請負人は、次の事項を記載した書面を追加工事等の着工前に下請負人と取り交わすことで、追加契約・変更契約の締結前であっても工事に着手することが可能です。

➀下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容

➁当該追加工事等が契約変更の対象となること及び契約変更等を行う時期

③追加工事等に係る契約単価

このようなケースであっても、請負契約書等の交付について省略することはできません。追加契約・変更契約書の締結・交付については、追加工事等の全体数量等の内容が確定した時点で遅滞なく行うことになります。

 

まとめ

 

請負契約の違反をすると、監督処分の対象となりますし、最悪のケースですと行為者に対して「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」、法人に対しては「1億円以下の罰金」と重い罰則が科せられる可能性がありますので、建設業法違反となるような行為は避けましょう。

 

行政書士船場事務所