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外国人の雇用について

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外国人の雇用について

2021年02月22日
外国人の雇用について

最近、コンビニなどでも外国人の方の店員さんをよく見かけるようになりました。

建設業において外国人雇用はどうなっているのでしょうか。

在留資格についてや、建設業における外国人就労や外国の方を雇うにはどうすればいいかを見ていきます。

まずは基本的な在留資格から見ていきます。

 

在留資格について

 

在留資格とは、外国人の方が日本に滞在するための資格です。

その資格は29種類に分けられ、大きく「活動類型資格」「地位等類型資格」の2つに分けることができます。

 

活動類型資格

 

活動類型資格は「活動に基づく資格」で、例えば「日本の企業で働く」「日本の大学で勉強する」など日本でどのような活動を行うのかを明確にすることで取得できる資格です。

主なものは以下になります。

・技術・人文知識・国際業務・・・専門知識を活かしたホワイトカラーの在留資格です。具体的には、営業、マー

                                                   ケティング、経理や貿易などの事務職、通訳や翻訳、デザイナー、SEなどのコ

                                                   ンピューター関連の仕事、電気・機械系のエンジニアの仕事が当てはまります。

・技能ビザ・・・調理師や熟練した技術職に当てはまる在留資格で、技能ビザで特に多いのはコック・調理師です。

・企業内転勤ビザ・・・人事異動・転勤で日本にくる外国人社員が対象になる在留資格です。海外にある日本企業

           の支社から日本にある本社へ転勤するケースや、その逆に、海外にある外国企業から日本

                                   にある支社に転勤するケースなどです。

・経営管理ビザ・・・外国人経営者や役員が取得する必要がある在留資格です。

・特定活動ビザ・・・外国の大学の外国人学生が、その大学の教育課程の一部としてインターンシップによって日

                              本にくる場合に認められる在留資格です。

 

ビザの種類は29種類ありますが、外国人雇用に伴う就労ビザは、ほとんどがこの5種類のビザの中からどれかを選んで取得するのがほとんどのケースになっています。

 

地位等類型資格

 

地位等類型資格とは、地位・身分に基づく在留資格です。この在留資格は就労制限が無く、日本人と同様に働くことができます

・永住者・・・法務大臣から永住の許可を受けたもの(入管特例法の「特別永住者」を除く。)です。「日本人の

      配偶者等」を除いて基本的に10年以上日本に在留し、かつ「素行が良好であること」「独立の生計

     を営むに足りる資産または技能を有すること」「その者の永住が日本国の利益に合すると認められる

                  こと」という条件を満たすと認められた場合に取得できます。

・日本人の配偶者等・・・日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者 です。日本人の配偶

                                     者・子・特別養子(6歳になるまでに本当の親との縁を切って養子になる場合)が得られ

                                     る在留資格です。ちなみに日本人の配偶者等と在留資格の方が、離婚した場合、婚姻生活

                                     が3年以上ありかつ一定の収入または資産がある場合または見込まれる場合、たは離婚

                                    後、子供(日本人の実子)の親権を持ち、日本でその子供の面倒をみる必要がある場合は

                                  「定住者」へビザを変更できます。

・永住者の配偶者等・・・永住者・特別永住者の配偶者及び本邦で出生し引き続き在留している子が得られる資格で

                                     す。 この「永住者の配偶者等」の在留資格の方が、離婚した場合、「日本人の配偶者等の

                                     在留資格」の方と同じく定住者へビザの変更が可能です。

・定住者・・・親の連れ子として来日した外国人や日系人(日系ブラジル人・日系ペルー人)などです。

 

これらの身分系のビザの方は、就労するにあたってなんの制限もありません。日本人と同じです。よって、単純作業や肉体労働、レジや販売、工場の仕事でも制限なく働くことが出来ます。

 

在留資格の就労制限

 

活動類型資格の中でも下記のような在留資格は就労が不可能となります。

・文化活動・・・収入を伴わない学術上や芸術上の活動や研究を行う 例)日本文化の研究員など

・短期滞在・・・観光客や親族の訪問、会議の参加等

・留学・・・本邦(わが国)の大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中学校および小学校等の学生・生徒

研修・・・本邦の公私の機関により受け入れられて行う技能等の修得をする活動 (研修生)

・家族滞在・・・就労ビザで滞在する外国人の家族 (外国人の夫婦が日本に在留していて、一方が会社に勤務し就労

       ビザを取っている場合、一方が働いていない場合は、働いていない方のビザは「家族滞在」になり

         ます。)

 

留学生のアルバイト

 

「資格外活動許可」を取得すればアルバイトが可能

 

留学生の方は原則就労は不可能です。しかし留学生や家族滞在などの方は「資格外活動許可」取れば週28時間までは働くことが出来ます。留学生の方は、例外的に夏休みなどの長期休暇中の期間は、学校が休みということで、週40時間までは就労が可能です。

就労ビザは、単純労働は禁止されています。ここでいう単純労働とは、特別な知識や技術を要しない労働、あるいは知識・技術が同一の作業によって成り立っている労働です。例えば、レジや店舗物販、工場での仕事、工事現場、レストランでのホール係などです。しかし留学生などが「資格外活動許可」を得て、アルバイトをする場合は、これらの業務に就くことは可能です。留学生などのアルバイトには、原則仕事内容の制限は無く、単純作業にも就くことが出来ます。

またアルバイトであっても「風俗営業」に関わるものには就くことはできません。性風俗の事業所はもちろんですが、スナックやキャバレー、麻雀店やパチンコ店などの風俗営業法上の営業許可業種での勤務も不可です。

 

留学生などのアルバイトの時間制限

 

「資格外活動」を取った留学生などは週28時間まで(夏休みなどの長期休暇は週40時間まで)働くことが可能ですが、この時間制限は非常に厳しく見られており、もし違反すると資格外活動違反として「1年以下の懲役・禁錮、200万円以下の罰金」(入管法73条)が課せられています。また留学ビザの更新が出来なくなったり、就職が決まっても就労ビザへの更新が不許可となったりします。雇った企業側にも「3年以下の懲役、300万円以下の罰金」(入管法73条の2)が課せられます。課税証明書や納税証明書、その他の各種書類によって発覚してしまいますので、28時間を超えて働かせるのは、絶対にやめましょう。

「資格外活動許可」を持っているか、時間超過して働いていないかを厳重に管理し、留学生などのアルバイトを雇わなくてはいけません。

 

建設業での外国人就労

 

建設業での外国人雇用は、事務系職種での採用と建築現場作業での採用に大きく分かれます。

事務部門でいえば、人事総務の仕事、会計の仕事、マーケティング・営業の仕事、海外拠点との通訳翻訳の仕事などの事務系であれば、全般的に就労ビザを取得することが可能です。

また技術系の事務でいえば、設計、技術開発などの技術職でも、就労ビザを取得することが可能です。

このような仕事は「技術・人文意識・国際業務」という就労ビザになり、大学等で学んだ専攻と関連する職務で雇用される場合に取得できます。

一方、建設現場作業(設計・施工管理は除く)の仕事ですが、これは単純労働とみなされますので、基本的には就労ビザは取得できません。

 

外国人の単純労働の禁止

 

日本では、外国人の就労に関し、専門的な知識や技術を有する人材のみを認めるという大原則があり、基本的には専門的な知識や技術を必要としない単純労働での在留は認めていません。

理由として考えられるのは、日本人の雇用の確保と治安の悪化を防ぐことです。

外国人を安い報酬で雇って就労ビザがとれるようにしてしまうと、日本での標準的な報酬相場が不当に崩れて下落してしまい、日本人の就職先が安すぎる報酬ばかりになり、日本人の雇用が害されるからです。

また、外国人を安い報酬で酷使する雇用状況が日本国内に広がってしまうと、外国人の労働環境が悪化し、日本の労働社会のモラルが低下したり、日本の治安が悪化したり、犯罪が増加してしまうおそれがあり、結局は日本社会全体にとってマイナスにしかならない、と考えられていると思われます。

大前提として、「日本人と同等額以上の報酬を支払うこと」「単純労働でないこと」の2つは絶対に必要になります。

 

特定技能

 

今まで単純労働とされる職種では、就労ビザを取ることは不可能でした。しかしながら、日本において少子高齢化に伴う働き手不足が深刻化し、生産性の向上や国内人材の確保の為の取り組みを行ってもなお、状況の改善には不十分であると判断された為、「人手不足と認められる業界」に外国人の受け入れが解禁されました。その在留資格が2019年4月1日の施行をもって、新たに新設された「特定技能」という在留資格です。

この特定技能の在留資格の認可に「学歴」や「母国における関連業務への従事経験」が不要とされています。従来の在留資格の領域と異なり、高度・専門的なものである必要はなくこれまで不可能だった単純労働での就労ができるようになり、その中に建設業も含まれています。

 

対象となる14分野

 

人材不足が深刻とされている特定技能の対象となる分野が下記の図になります。

特定技能受入産業

 

特定技能の種類

 

特定技能には1号と2号があります。

日本で特定技能ビザで就労を希望する人がまず取得するのは、上記14業種が対象となっている「特定技能1号」です。特定技能の対象者となる為には、技能試験と日本語能力試験に合格しなくてはなりません。技能水準については、各省庁が定めた試験に合格すること(各分野で即戦力となるレベルを基準)で、日本語能力については、日本語能力試験のN4級以上の合格でクリアできるものとなります。

また試験を受けなくてもクリアできる条件として、技能実習を3年間良好に修了(技能実習2号の良好な修了)していれば、技能試験と日本語能力試験の合格は不要となっています。

特定技能2号の対象分野は建設業と造船・舶用工業のみです。特定技能2号は、原則として、1号の修了者が試験に合格すると、特定技能2号の在留資格を得ることができます。

特定技能1号の在留期間は通算で5年となっており、家族の帯同は認められていません。他の在留資格を得ない限りは5年を超えて日本に留まることはできません。

一方、特定技能2号は、他の在留資格と同様に要件を満たしていれば更新することが可能であり、在留期間の上限はありません。また家族の帯同も可能です。

また特定技能の雇用形態は、農業と漁業を除いて、原則として正社員として雇用することが必須となっています。

 

特定技能と技能実習

 

技能実習制度の目的は、「外国人に日本の優れた技術を身に着けてもらい帰国後に母国の産業発展に活かしてもらうこと

特定技能の目的は「働き手不足の解消」ですので、まず制度の目的が異なります。

転職が可能

技能実習生は原則として転職する(実習先企業の変更をする)ことができませんが、特定技能の資格者は、同一分野内に限り転職が可能です。また、試験等によって技能水準の共通性が確認されている産業に従事する特定技能の資格者は、一部業務区分を超えて転職を行うことができます。

受け入れ人数に制限が無い

技能実習の場合には常勤職員に応じた人数枠があります。一方、特定技能の場合には、「介護」と「建設」分野を除き受け入れ人数に制限がありません。

 

 

外国人を雇うには

 

外国人を自社で雇いたい場合、受け入れる側にも要件があります。以下で確認していきます。

 

受入機関の要件とは

 

特定技能の在留資格を持っている外国人を受け入れるための、受入機関側の要件もあります。

とても細かいですが、大まかにいうと3つであり

➀法令等の違反がないこと

➁各省の要求に対して協力すること

➂特定技能対象外国人の支援ができること

になります。

そして、特定技能で外国人を雇用する際には同等の経験を有する日本人と「同等以上の条件」で雇用する必要があります。

 

登録支援機関

 

特定技能の外国人を雇用する場合、職場生活、社会生活、日常生活においての支援を行い、支援計画書の作成が必須です。支援としては以下のものがあります。

出入国在留管理庁-支援計画の概要②-1024x711

出入国在留管理局 在留資格「特定技能について」より引用

 

 

このように支援の内容は多岐にわたっています。また、支援計画書は最初に提出した後に四半期毎に実施状況を届け出る必要がある他、変更があればもちろんその都度報告する必要があります。これらの支援や届け出が負担になる場合、全てを自社で行わずに一部もしくは全部を外部機関である「登録支援機関」に委託することができます。

登録支援機関とは、出入国在留管理庁長官の登録を受けた機関であり、特定技能所属機関に委託されて特定技能外国人の支援計画の作成・実施を行います。

登録支援機関は出入国在留管理局のホームページに記載されており、問い合わせをすることが可能です。

 

在留資格の確認

 

 外国人を雇用する際は、不法就労にならないように注意が必要です。不法就労は入管法により禁止されており、不法就労をした外国人だけでなく、不法就労させた事業主も処罰の対象となっています。

 

▼不法就労とは

不法就労となるのは、次の3つのケースです。

➀不法滞在者が働くケース

 密入国した外国人やオーバーステイの外国人が働く等

➁出入国在留管理局から働く許可を受けていないのに働くケース

 観光や知人訪問の目的で入国した外国人が働く等

③出入国在留管理局から認められた範囲を超えて働くケース

 外国料理店のコックとして働くことを認められた外国人が工場で単純労働者として働く等

 

不法就労をさせないためには、外国人を雇用する際に在留カードを確認する必要があります。在留カードは、入管法上の在留資格を持って適法に日本に中長期滞在する外国人が所持するカードです。観光などで一時的に滞在する外国人や不法滞在者は所持していません。

不法就労させたり、不法就労をあっせんした者は、不法就労助長罪となり、3年以下の懲役・300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。外国人を雇用する際に、不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れることができませんので、確認はしっかり行う必要があります。

 

在留カードの確認方法

 

外国人を雇用する際には、その外国人が就労できる外国人であるかどうかを確認する必要があります。在留カードの確認の手順は次のとおりです。

●手順1

在留カード表面の「就労制限の有無」を確認します。記載されている内容により、その外国人を雇用できるかどうかが決まります。

➀「就労不可」

この記載のある在留カードを持っている外国人は、原則就労できません。ただし、例外もあるため、次の【手順2】を確認してください。

➁「在留資格に基づく就労活動のみ可」

この記載のある在留カード持っている外国人は、在留資格に基づく就労活動であれば就労することができます。

③「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可

この記載のある在留カードを持っている外国人は技能実習生です。技能実習生は、技能実習計画に基づいて、実習実施者との雇用関係の下で、実践的な技能等の習得を図ることになっています。法務大臣が個々に指定した活動等が記載された指定書を確認してください。

➃「指定書により指定された就労活動のみ可」

この記載のある在留カードを持っている外国人は「特定活動」という在留資格を持っている外国人です。個々に指定された活動しか行うことができません。法務大臣が個々に指定した活動等が記載された指定書を確認してください。

⑤「就労制限なし」

この記載のある在留カードを持っている外国人は、職業の種類や時間の制限なく日本人と同じように就労することができます。

 

●手順2

在留カード裏面の「資格外活動許可欄」を確認してください。【手順1】で「就労不可」と記載された在留カードを持っている外国人であっても、「資格外活動許可欄」に次のいずれかの記載がある外国人は就労することが可能です。

➀「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」

   風俗営業等を除き、週28時間以内で就労することができます。

➁「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」

    資格外活動許可書に記載された範囲内で就労することができます。資格外活動許可書を確認してください。

 

在留カード