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35.元請と下請のルールについて

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35.元請と下請のルールについて

2021年11月09日
35.元請と下請のルールについて

建設工事の現場には、元請業者から一次下請業者、二次下請業者…と多くの建設業者が出入りしています。

その元請業者と下請業者の間には、色々なルールが定められており、それを守って契約から完成まで行わなくてはいけません。

今回は、そのルールをいくつか見ていきたいと思います。

 

二次下請業者が建設業法違反をしている場合、元請としてすべきことはあるのか

 

二次下請が建設業法にいはんしていたとして、指導する義務があるのは一次下請業者か、元請業者かどちらなのでしょうか。

元請業者の役割について見ていきます。

 

元請業者の役割とは

 

特定建設業者が発注者から直接建設工事を請け負い、元請業者となった場合には、次の3つの責務を負うことになります。

➀現場での法令遵守指導の実施

➁下請業者の法令違反については是正指導

③下請業者が是正しないときの許可行政庁への通報

建設工事に携わる下請業者が建設業法、建築基準法、労働基準法などの諸法令に違反しないように指導に努めなければなりません。

▼建設業法

(下請負人に対する特定建設業法者の指導等)

第二十四条の七 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事の下請負人が、その下請負に係る建設工事の施工に関し、この法律の規定又は建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるものに違反しないよう、当該下請負人の指導に努めるものとする。

2 前項の特定建設業者は、その請け負った建設工事の下請負人である建設業者を営む者が同項に規定する規定に違反していると認めたときは、当該建設業者を営む者に対し、当該違反している事実を指摘して、その是正を求めるように努めるものとする。

3  第一項の特定建設業者が前項の規定により是正を求めた場合において、当該建設業を営む者が当該違反している事実を是正しないときは、同項の特定建設業者は、当該建設業を営む者が建設業者であるときはその許可をした国土交通大臣若しくは都道府県知事又は営業としてその建設工事の行われる区域を管轄する都道府県知事に、その他の建設業を営む者であるときはその建設工事の現場を管轄する都道府県知事に、速やかに、その旨を通報しなければならない。

 

元請業者が指導等を行う下請業者の範囲

 

元請業者が行う指導等の対象となる下請業者の範囲は、工事に携わった全ての下請業者となります。つまり元請業者と直接下請契約を締結した一次下請業者だけでなく、一次下請業者と下請契約を締結した二次下請業者も、さらにそれ以下の下請業者も、工事に携わったすべての下請業者が対象となります。

 

元請業者による指導等の対象

 

 

 

遵守すべき法令

 

建設工事の現場で守られなければならない法令は建設業法に限りません。建物を建てる工事であれば建築基準法が関係しますし、従業員を雇用して施工するのであれば労働基準法が関係します。現場で遵守すべき法令は多岐にわたります。元請業者が下請に対して指導すべき法令としては、次の表の法令が挙げられます。

 

▼指導すべき法令の規定(建設業法施行令第7条の3参照)

法律名 内容
建設業法

下請負人の保護に関する規定、技術者の設置に関する規定等本法のすべての規定が対象とされているが、特に次の項目に留意すること。

(1)建設業者の許可(第3条)

(2)一括下請の禁止(第22条)

(3)下請代金の支払(第24条の3、第24条の6

(4)検査及び確認(第24条の4)

(5)主任技術者及び監理技術者の設置等(第26条、第26条の2)

建築基準法

(1)違反建築の施工停止命令等(第9条第1項・第10項)

(2)危険防止の技術基準等(第90条)

宅地造成等規制法

(1)設計者の資格等(第9条)

(2)宅地造成工事の防災措置等(第14条第2項・第3項・第4項)

労働基準法

(1)強制労働等の禁止(第5条)

(2)中間搾取の排除(第6条)

(3)賃金の支払方法(第24条)

(4)労働者の最低年齢(第56条)

(5)年少者、女性の坑内労働の禁止(第63条、第64条の2)

(6)安全衛生装置命令(第96条の2第2項、第96条の3第1項)

職業安定法

(1)労働者供給事業の禁止(第44条)

(2)暴行等による職業紹介の禁止(第63条第1項、第65条第8号)

労働安全衛生法 (1)危険・健康障害の防止(第98条第1項
労働者派遣法 (1)建設労働者の派遣の禁止(第4条第1項)

出典:国土交通省中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて(令和2年10月改訂)」

https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/pdf/R0210_000_tekiseinasekounokakuho.pdf

 

元請業者は、これらの法令の規定について下請業者へ指導する必要があります。また下請業者が法令違反をしていた場合は是正指導を行い、是正しない場合は許可行政庁へ通報しなければなりません。

 

元請業者から建設資材の購入先を指定された場合それは問題ないのか

 

元請業者から資材の購入先を指定された場合、それが下請負人にとって不利益となるのであれば、元請業者が建設業法違反になる可能性があります。

 

不当な使用資材等の購入強制の禁止

 

建設工事の下請契約とは、元請負人が下請負人に工事を注文し、下請負人は元請負人が希望するとおりの工事を行うものです。そのため、元請負人から「工事の際にはこの資材を使って欲しい」と使用資材等について指定されることが少なくありません。このような資材の指定や資材購入先の指定そのものに違法性があるわけではありません。ただし、自己の取引上の地位を不当に利用した場合や、指定のタイミング次第では、建設業法違反となることがあります。

仮に、下請契約を締結の前に元請負人が下請負人に対して使用する建設資材の指定を行ったとします。この場合、契約締結前なので、下請負人はその資材の価格をふまえて見積書を作成することができます。下請負人にとっては適正な価格で工事を行うことができるため、下請負人の利益が害されることはなく、建設業法違反とはなりません。

一方、下請契約締結後に使用する建設資材の指定を行ったとします。この場合、指定された建設資材が当初予定していた建設資材より高価であった場合には、資材購入のための材料費が増え下請負人の利益が害されることとなります。そのため、下請負契約後に使用資材等をしたり、購入先を指定することは建設業法違反となるおそれがあります。 

▼建設業法

(不当な使用資材等の購入強制の禁止)

第十九条の四 注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない

 

「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは?

 

建設業法第19条の4の「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、工事を大量かつ継続的に注文することにより取引上優越的な地位にある元請負人が、下請負人の指名権、選択権があうこと等を背景に、下請負人を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいいます。

下請負人が元請負人による使用資材等の指定を承諾した場合でも、元請負人と下請負人の力関係から、下請負人の事由な意思決定を阻害したと判断される場合は、建設業法違反となるおそれがあります。

 

「資材等又はこれらの購入先の指定」とは?

 

建設業法第19条の4の規制対象となる、「資材等又はこれらの購入先の指定」とは、商品名や販売会社を指定することです。

「A会社が製造している△△型を使用するように」と資材等について会社名や商品名で指定する場合が、資材等の指定に当たります。また「工事で使用する資材はB会社で購入するように」と販売会社を指定する場合が、購入先の指定に当たります。

これらの「資材等又はこれらの購入先の指定」が、元請負人の自己の取引上の地位を不当に利用した場合であったり、下請負契約締結後のタイミングであったりすると建設業法違反となりますので注意が必要です。

 

 

下請業者から工事が完成したと連絡がきたが、検査はいつ行えばいいのか

 

下請負人から完成したと連絡が来た時、完成検査はいつ行ってもいいのでしょうか。

検査のタイミングは建設業法に規定があります。

 

下請負人から完成通知と引渡し申し出

 

下請負人は請け負った工事が完成すると、元請負人に工事の「完成通知」を行います。この完成通知は、下請負人から工事が完成した旨を知らせるものにすぎません。そのため、元請負人は下請負人から工事完成通知を受け取ると「検査」を行うこととなります。元請負人の完成検査で下請負人が行った工事に問題が無いとされると、次に下請負人は完成した工事の「引渡し申出」を行うことができます。

工事が完成した際も工事の引渡しを行う際も、いずれも下請負人から元請負人へ通知をしなければなりません。これらの通知は口頭で行っても良いこととされていますが、後日紛争の原因とならにように、書面で行うことが望ましいとされています。

 

完成通知を受けてから検査を行うまでのルール

 

下請負人から完成通知を受けてから元請負人の検査がなかなか行われないと、下請負人はいつまでも目的物の引渡しを行うことが出来ず、その結果、元請負人からの支払が遅れてしまうことにもなります。そのようなことが無いよう、建設業法で元請負人が検査を行うタイミングについて明確に規定しています。

元請負人は下請負人から完成の通知を受けてから、20日以内で、できる限り短い期間内に検査を行わなければなりません。

▼建設業法

(検査)

第二十四条の四 元請負人は、下請負人からその請け負った建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から二十日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。

 

検査から工事の目的物引渡しまでのルール

 

元請負人による検査が建設業法の規定どおりに行われたとしても、完成した工事の目的物を引き渡すことができなければ、引き渡しまでの間、下請負人はその工事の目的物について保管責任や危険負担を負わせることになります。そのため、引渡しのタイミングについても建設業法で規定されています。

元請負人は下請工事の完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに完成した工事の目的物を引き受けなければなりません。

▼建設業法

(引渡し)

第二十四条の四

2 元請負人は、前項の検査によって建設工事の完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに、当該建設工事の目的物の引渡しを受けなければならない。ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から二十日を経過した日の以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合には、この限りではない。

 

検査フロー

出典:国土交通省中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて(令和2年10月改訂)」

https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/pdf/R0210_000_tekiseinasekounokakuho.pdf

 

元請から工事のやり直しを指示された場合について

 

工事が完了したものに対し、元請からやり直しの指示を受けた場合、どうなるのでしょうか

 

工事のやり直し

 

元請負人は下請工事の施工にあたり下請負人と十分な協議を行ったり、明確な指示を行うなどにより、下請工事のやり直しが発生しないよう努めることはもちろんですが、下請工事の完成後に、やむを得ずその工事のやり直しを元請負人が下請負人に対して、工事が完成するようにやり直しを依頼することは当然認められる行為です。

ただし、元請負人からの一方的な下請負人へのやり直し依頼等、元請負人の強い立場を利用したやり直しが起こらないよう、下請負人に工事のやり直しをさせる場合には、その費用負担等において注意が必要です。

 

やり直し工事の費用負担は?

 

工事のやり直しが必要となった場合、やり直し工事に必要な費用は原則として元請負人が負担しなければなりません。元請負人はその工事においては施工管理や施工監督を行う義務があり、下請負人には施工指示を行います。つまり、元請負人にはやり直し工事が必要とならないように対策することが可能であるため、やり直し工事に必要な費用は原則として元請負人の負担とされています。

例外として、下請負人にやり直し工事の費用負担をさせることができる場合もあります。それは、下請負人の責めに帰すべき理由がある場合です。

具体的には、下請負人の施工が請負契約書等に示された内容と異なる場合や、下請負人の施工に瑕疵がある場合です。元請負人は下請負人に指導等をし、元請負人として責務を果たしていたにもかかわらず、下請負人がその指導等を受け入れず施工したことによりやり直しが必要となった場合は、下請負人に費用負担させることができます。

 

やり直し工事までの流れ

 

下請工事のやり直しは当然下請負人が施工することになりますが、やり直し工事は当初の請負契約の内容に含まれているものではありません。特に、やり直し工事に必要な費用については、どの程度になるか当初の請負契約においては想定することができません。工事のやり直しが必要となった場合には、まず元請負人と下請負人で必要な費用について協議します。そのうえで変更契約書を交わして、工事を施工するようにします。この変更契約書を交わさず工事を行った場合、建設業法第19条第2項の規定に違反することとなります。

また、やり直し工事に必要な費用については、建設業法第19条の3で不当に低い請負代金での施工が禁止されているので、通常必要と認められる原価を下回ることがないように注意しなければなりません。

 

▼建設業法

(建設工事の請負契約の内容)

第十九条

~中略~

2 請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

~以下省略~

(不当に低い請負代金の禁止)

第十九条の三  注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。

 

 

下請業者への代金支払いのルール

 

契約のたびに、支払期日を定めるのはめんどうなので、下請業者との契約では「月末締め翌月末支払い」と決めてる元請業者もいらっしゃると思いますが、下請代金の支払いについてもルールがあります。

 

下請代金の支払日

 

元請負人から下請代金が支払わなければ、下請負人の経営が不安定になります。また、手抜工事や粗雑工事、労災事故等を引き起こすことになりかねません。そのため、下請負人への代金支払いに関するルールが、建設業法で明確に定められています。

元請負人は、注文者から工事が完成した後に支払いを受けたときはもちろんのこと、請負代金の出来形部分に対する支払を受けたときにおいても、支払対象となる工事を施工した下請負人に対して、相当分の下請代金を「1ヵ月以内」で、かつ「できる限り短い期間内」に支払わなければならないとされています。

この下請代金の支払に関する規定は、適正に代金が支払われることにより工事の適正な施工を確保することと下請負人の利益保護を目的として設けられています。

前払金に関しても同様です。資材購入等の工事準備のための費用確保のために、元請負人が注文者から前払いを受けた場合には、下請負人に対しても工事着手に必要な費用を前払金として支払うよう努めなければなりません。

注文者から出来形・完成払を受けたら

出典:国土交通省中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて(令和2年10月改訂)」

https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/pdf/R0210_000_tekiseinasekounokakuho.pdf

 

特定建設業者に対しては、さらに厳しいルールがあります。

特定建設業者である元請負人は、注文者から支払を受けていなくても、下請負人からの引渡し申出日から50日以内で下請代金を支払わなければなりません。ただし、特定建設業者と契約をした下請負人が、「特定建設業者」又は「資本金が4,000万円以上の法人(一般建設業者・特定建設業者の区別なし)」である場合は対象外となります。このルールを守らなかった場合、罰則があるわけではありませんが、特定建設業者は支払遅延として遅延利息の支払いをする必要があります。

特定建設業者が注文者となる場合の、下請工事の完成から下請代金の支払いまでの流れは次のとおりです。建設業法で期限が設定されているものについては、どの工程からどの工程までの期間なのか、よく確認しておく必要があります。

検査・引渡・下請代金の支払フロー

出典:国土交通省中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて(令和2年10月改訂)」

https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/pdf/R0210_000_tekiseinasekounokakuho.pdf

 

なお、特定建設業者は下請代金の支払について、元請負人としての義務と特定建設業者としての義務を負うため「注文者から出来形払いや完成払いを受けた日から1ヵ月以内」か「下請負人の引渡し申出日から50日以内」のいずれか早い方で下請代金を支払う必要があります。

 

下請代金の支払手段は現金で

 

下請代金の支払手段は現金という認識をお持ちの建設業者の方も多いとおもいます。これまで国土交通省の「建設産業における生産システム合理化指針」(https://www.mlit.go.jp/common/001068212.pdf)等によって、下請代金の支払いは、できる限り現金払いとするということが周知されていましたが、実は建設業法には支払手段に関する規定はありませんでした。

令和2年10月に施行される改正建設業法には、下請代金の支払手段に関する規定が新たに追加され、下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならなくなります。

▼建設業法

(下請代金の支払)

第二十四条の三

~中略~

2 前項の場合において、元請負人は、同項に規定する下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うような適切な配慮をしなければならない。

~以下省略~

 

なお「現金」として扱われるものとして、キャッシュは当然のこと、銀行振込による方法や小切手による方法も含まれています。すぐに現金化できるものが「現金」として扱われるということです。

 

「月末締め翌月末払い」は建設業法違反?

 

建設業法の下請代金の支払いルールと照らし合わせると、「月末締め翌月末払い」という支払期日の設定の仕方が建設業法違反となる場合があるということがわかります。

例えば、特定建設業者が注文者となる下請契約において、下請負人による工事目的物の引渡しの申出が令和3年4月1日だったとします。

この場合に「月末締め翌月末払い」が採用されているとすると、令和3年4月30日で締めて、令和3年5月31日に支払うこととなります。これでは、下請負人の引渡し申出日から下請代金の支払日まで、50日を超える期間となり、建設業法違反となります。

毎月の締日と支払日を設定する場合、引渡しの申出日から50日を超える日が支払日となってしまうこともありますので注意が必要です。

 

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