専任技術者の実務経験について 認められる実務経験とは?
2020年11月26日
建設業許可の専任技術者になるには、➀取りたい業種の対象の国家資格を持っていること、②取りたい業種の指定の学科を卒業し一定期間の実務経験を積んでいること、③取りたい業種の実務経験を10年以上積んでいることのいずれかが必要です。
➀の資格保有者であれば、その資格の証明書などを提出すればいいのですが、実務経験の場合、その実務経験が実際にあったことを証明しなければなりません。
専任技術者の実務経験について、何が実務経験として認められるのか、その実務経験があったことを証明するためにはどんな書類が必要なのかについて解説していきます。
専任技術者の実務経験とは |
専任技術者の要件として、取得したい建設業許可の業種の対象の資格を持っていなければ、一定期間の実務経験が必要です。その要件は以下になります。
一般建設業許可における専任技術者の実務経験の要件 |
➀一定の資格(詳細は業種ごとのページを参照) ②10年間の実務経験 ③学歴(下表の指定学科卒業)+実務経験 ・ 大学卒業+3年以上の実務経験 ・ 高等専門学校卒業+3年以上の実務経験 ・ 専門学校卒業(高度専門士、専門士)+3年以上の実務経験 ・ 専門学校卒業(上記以外)+5年以上の実務経験 ・ 高等学校等卒業+5年以上の実務経験 |
▼指定学科一覧
許可を受けようとする建設業 | 指定学科 |
土木工事業、舗装工事業 | 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。以下同じ。)都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科 |
建築工事業、大工工事業、ガラス工事業、内装仕上げ工事業 | 建築学又は都市工学に関する学科 |
左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、塗装工事業、解体工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
電気工事業、電気通信工事業 | 電気工学又は電気通信工学に関する学科 |
管工事業、水道設備工事業、清掃施設工事業 | 土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科 |
鋼構造物工事業、鉄筋工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 | 土木工学又は機械工学に関する学科 |
板金工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
防水工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
機械器具設置工事業、消防施設工事業 | 建築学、機械工学又は電気工学に関する学科 |
熱絶縁工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
造園工事業 | 土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科 |
さく井工事業 | 土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科 |
建具工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
※具体的にどういう名称の学科であれば認められるかは各行政庁の判断になりますので、実際に「学歴+実務経験」で申請を考えている場合、申請前に指定学科に該当するか否かを各行政庁に問い合わせてください。
複数の業種に従事していた場合の考え方は? |
以下のような場合を考えてみましょう。
Xさんは就職後、15年間にわたって内装仕上工事と建具工事に従事してきました。 この場合、Xさんは内装仕上工事業と建具工事業の両方の専任技術者になれるのでしょうか? |
答えは「NO」です。
ある期間において複数の業種を経験していたとしても、経験として認められるのはその複数の業種のうち原則として1業種で、その期間は他の業種での実務経験期間としてカウントすることはできません。
Xさんの場合、例えば内装仕上工事業の専任技術者になるための実務経験期間として10年を使ってしまうと、その10年は建具工事の実務経験期間としてはカウントできなくなります。このため、建具工事の実務経験としては、15年から内装に使った10年を差し引いた5年しか認められません。
このため、Xさんが実務経験で建具工事業の専任技術者になるためには、さらに5年間建具工事の経験を積まなければなりません。
実務経験の緩和措置 |
しかし、例外的に一定の決められた業種においては、実務経験の緩和措置が取られており、少し短い期間で2業種の専任技術者になることができます。
例外1 許可を受けようとする専門工事の実務経験が8年以上 + 一式工事の実務経験を4年以
上あれば、専門工事の専任技術者になることができます。
・土木一式はとび・土工・コンクリート、しゅんせつ、水道施設の3業種に振り替え可能
・建築一式は大工、屋根、内装仕上、ガラス、防水、熱絶縁の6種類に振り替え可能
例えば、大工工事業で8年以上の経験があり、かつ大工工事業と建築一式を合わせた経験が
12年以上あれば大工工事業での専任技術者になれます。
この逆は不可です。例えば、建築一式で8年、大工工事業で4年の実務経験があっても、建
築一式の専任技術者にはなれません。建築一式の専任技術者になるには10年以上の実務経
験が必要です。
例外2 専門工事間での実務経験の振替が可能
・大工と内装仕上は相互に実務経験を振り替え可能です
大工工事の実務経験が8年以上あり、内装仕上工事の実務経験が4年あれば大工工事の
専任技術者になれます。その逆もOKです。なので内装8年、大工8年の合計16年で2業
種の専任技術者になることが出来ます。
特定建設業許可における専任技術者の実務経験の要件 |
一般建設業許可においては、資格が無い場合、許可を受けようとする業種において10年以上(指定学科を卒業している場合、3年や5年)の実務経験で専任技術者になれます。(その場合は10年以上もしくは3年5年分の実務経験を証明できる書類を用意しなければなりません)
特定建設業許可の場合、取りたい業種に対応する1級の国家資格者等以外は、一般建設業の専任技術者のいずれかの要件+許可を受けようとする業種において、元請として4500万円以上の工事を2年以上指導監督した経験が必要です。(指定建設業を除く。下記参照)
指導監督した経験とは、単なる現場主任や現場監督ではなく、「建設工事の設計、施工の全般にわたり工事現場主任や現場監督のような資格で工事の技術面を総合的に指導監督した経験」をいいます。
この指導監督した2年の実務経験は、一般建設業の専任技術者の要件に必要な実務経験に重複して計算することが出来ます。つまり10年以上の実務経験+2年以上の指導監督の実務経験の合わせて12年以上の実務経験が必要なのではなく、10年の実務経験のうち2年以上指導監督した実務経験があればokになります。
実務経験として認められないもの |
専任技術者に認められる実務経験とは、建設工事の施行に関する技術上の全ての職務経験であって、工事施工のための指揮・監督や建設機械の操作等、建設工事の施行に直接関わった経験です。また見習い中の方が技術取得の為に行う技術的な経験も認められます。
一方で、実務経験と認められないものは、建設工事現場に出入りはしていても、現場の単なる雑務を行っていた経験や事務作業の経験は、技術上の実務経験にはなりません。
一定の資格が無いと認められないもの |
一定の資格が無いと実務経験として認められない業種があります。
電気工事及び消防施設工事は、それぞれ電気工事士免状や消防設備士免状の交付を受けた者でなければ直接工事に従事することが出来ないため、免状等が無い者の経験期間は実務経験として認められません。
他にも、解体工事は、建設リサイクル法施行後の経験に関しては、とび・土工工事業の許可がある業者での経験、または解体工事業登録を行っている業者での経験でなければ実務経験として認められません。
特定許可の場合、指定建設業(土木・建築・管・鋼構造物・舗装・電気・造園の7業種)の専任技術者は、必ず1級国家資格者でなければなりません(1級建築施工管理技士など)。他業種のように「10年の実務経験+2年の指導監督的実務経験」は認められないので注意してください。
専任技術者の実務経験の証明について |
専任技術者の要件である、指定学科を卒業し3~5年の実務経験があったり、10年以上の実務経験がある場合、それを証明する資料を揃えて提出します。では、その証明する資料は何が必要なのか、以下で説明していきます。
実務経験を証明する為に添付する書類 |
実務経験を証明する為に添付する書類は、<実務経験証明書の記載内容について確認できる書類>と<実務経験証明書に記載された期間の在籍が確認できる書類>が必要です。大阪府の場合、必要な書類は以下のパターンに分かれます。
※実務経験証明書とは建設業許可申請書類の中の一枚で、専任技術者になりたい人が許可を取りたい業種での実務の経験を証明する書類です。専任技術者になりたい人の名前や、経験年数、携わってきた工事名などを詳しく記載する書類です。以下の添付書類は、その実務経験証明書に記載されていることを証明する為に添付するものです。
【一般建設業許可の専任技術者の場合】 |
<実務経験証明書の記載内容について確認できる書類>
➀証明する会社及び個人事業主が建設業許可を受けていない場合
期間中全ての工期・工事名・工事内容・請負金額が確認できる、工事の契約書・注文書・請求書・内訳書等の書類 (12ヵ月空かないように用意する)
➁証明する会社が建設業許可を受けており、実務経験で専任技術者として証明されていない場合、以下のいずれか
・建設業許可申請書の一部(受付印のある表紙及び証明を受ける技術者の実務経験の期間が過去
に証明を受けていた者の実務経験の期間を含む実務経験証明者(様式第9号))
・変更届の一部(受付印のある表紙及び証明を受ける技術者の実務経験の期間が過去に証明を受
けていた者の実務経験の期間を含む実務経験証明書(様式第9号))
・決算変更届の一部(受付印のある表紙若しくは完了通知のはがき及び実務経験年数の証明期間
に相当する工事 経歴書(様式第2号))
➂過去に実務経験で専任技術者として証明されている場合、以下のいずれか
・建設業許可申請書の一部(受付印のある表紙及び実務経験証明書(様式第9号))
・変更届の一部(受付印のある表紙若しくは完了通知のはがき及び実務経験証明書(様式第9号))
<実務経験証明書に記載された期間の在籍が確認できる以下のいずれかの書類>
※証明者と申請者が同一の場合、または過去に建設業者から証明を受けている場合は原則不要です。
・(年金の)被保険者記録紹介回答票(年金事務所でもらえます)
・雇用保険被保険者(申請時において雇用されている場合)
・雇用保険被保険者離職票(申請時において離職している場合)
・証明者が個人事業主の場合は、証明者の所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある第一表+専従者給与欄又は給与支払者欄に内訳・氏名の記載がある書類(要税務署の受付印or受信通知)
・証明者の印鑑証明書(3ヵ月以内のもの)
【特定建設業許可の専任技術者の場合】(指導監督的実務経験が必要な専任技術者) |
特定建設業の場合、一般建設業の専任技術者の要件の実務経験だけでは、特定建設業の専任技術者にはなれません。一般建設業許可の専任技術者のいずれかの要件に加え、元請として税込4,500万円以上の工事について、2年以上の指導監督的な実務経験が必要になります。この指導監督的な実務経験とは、建設工事の設計または施工の全般について、工事現場主任または工事現場監督のような資格で、工事の技術面を総合的に指導した経験をいいます。
<指導監督的実務経験証明書の記載内容について確認できる書類>
・初めて指導監督的実務経験が必要な専任技術者として証明される場合
証明者(実務経験があったことを証明する会社または個人事業主)での、工事の実績を記載した全ての工事について、元請・工期・工事名・工事内容・請負金額(4,500万円以上)を確認できる書類
申請業種についての工事の契約書・注文書・請求書・内訳書等の書類で確認します。
※指導監督的実務経験の経験期間は、各工事の工期が通算2年以上必要です。
・過去に指導的実務経験が必要な専任技術者として証明されている者の場合、以下のいずれか
建設業許可申請書の副本の一部(受付印のある表紙及び指導監督的実務経験証明書(様式第10号))
変更届の一部(受付印のある表紙及び完了通知はがき及び指導監督的実務経験証明書(様式第10号))
+上記の<実務経験証明書に記載された期間の在籍が確認できる以下のいずれかの書類>
が必要です。
まとめ |
専任技術者の実務経験の証明には、その証明しようとする期間の注文書などが必要なので、しっかり保存しておく必要があります。仲間内でメールや電話で工事の請負をしており、いちいち注文書や契約書などは作ってないという方もいらっしゃいますが、建設業許可の申請の際に必要になってきますし、そもそも書面により契約しないと建設業法違反の可能性がありますので、きちんと注文書や契約書を作成しておくことが大事です。